遡行報告 小又川カスミ谷

下山遅れて、心配とご迷惑をおかけし申し訳ありませんでした。さいわい、大きな事故もなく無事下山できました。ありがとうございました。

流域・谷名
早月川流域小又川源流、カスミ谷(奥大日岳西大谷尾根天狗の踊り場往復)
遡行日
2004年9月12日
メンバー
米澤、鎌田、福田、加納、平井、津田、山岸、奥野(L、記)
コースタイム
小又川取水口(車デポ) 6:37 → 大日山谷カスミ谷出合 8:12 → 最初の大滝(3段30m) → カスミ谷二俣 9:15 → 大滝(15m) 9:40 → 天狗の踊り場 12:26〜12:50 → 大滝 14:46 → 車デポ地 20:00
カスミ谷二俣の上流の大滝(15m)上流の良い場所
奥大日に衝き上げるあたりの荒涼とした谷 天狗の踊り場!!
天狗の踊り場は良いところだ 行きは ok 、帰りは?
崩落注意!! スリップ注意!! 大滝(15m直瀑)を
懸垂で下行
大滝を懸垂、
3段30mは、
写真が無い、残念
GPSのトレース、途中電池切れの部分あり

下山が20時と真っ暗になり、留守本部への連絡が21時とこれまたリミットを超過した山行、原因と対策は紙面を替えることとし、ここでは山行報告だけを書きます。

さて、今回のカスミ谷から天狗の踊り場は、私の念願のコース。2001年に初めてカスミ谷の入り口を垣間見てから、ずっと辿りたいと思っていたところ。残雪期にスキー滑降の記録(ご存知金沢の Super Doctor 等)はあるが、無雪期の遡行記録は検索かけても1つ(上市峰窓会様の記録)しか出て来ない。天狗の踊り場は、残雪期にはそれなりにトレースされているようだが、無雪期に下から登って剱岳の絶嶺を拝んだ話は、先の唯一ヒットした記録しか聞いたことがない。未知のコースをワクワクしながら辿ることにする。

5時30分上市町役場に集合、車3台に分乗し馬場島手前の早月川小又川出合いを目指す。小又橋手前で小又川林道に入る。小又川林道は、今年の豪雨でも何とか大崩壊は免れていたが、補修の手が所どころはいっていた。コット谷出合いの砂防堰堤は土砂で埋まり、小又川本流の取水堤は、土石流の直撃を受けぶっ壊れてしまっていた。取水堤あとで車を停め、身仕度調えて入渓。

最初は河原歩き、でもこれをナメてはいけない。浮石が多く、「これが浮いてるの?」というくらい大きなのが、ちょっと手をかけただけで転がり落ちる。十分注意して遡行するが、ナカナカ良いペースで大日山谷出合いに到着、未だ8時を少しまわったころ、朝の光が眩しい。大日山谷は、見通せる上部でかなり大きな崩壊があったようで、その土砂が小又川を直撃していた。ただ、今日の小又川、水量は少な目で渡渉も楽だ。

一息入れたらいよいよカスミ谷にはいる。カスミ谷に入ると、雰囲気がガラっと変る。崩壊と倒木、散乱する巨大な岩、大きなオチと滝。初っ端から歓迎を受ける。でも、スノーブリッジの残骸が全く無いのは非常にラッキー、天狗の踊り場到達の期待が高まる。この谷は、スノーブリッジの残骸が谷を埋めていたら、その時点でギブアップなのだ。入って間も無く谷幅が狭まり、左に大きくクランク、最初の斜瀑3mが現われる。右(左岸)の斜めの岩盤を登り越えるが、岩盤は水流でツルツルに磨かれ、油断すると恐い。更に少しで今度は右にクランク、3段30mの斜瀑に行き当る。これは、左(右岸)のやはり斜めの岩盤を登る。岩盤の僅かなリスを手掛り足掛かりに登るが、気持の良いものではない。一旦滑べるとアウトの斜岩盤を落ち口間近まで登り、最後は微妙なバランスでトラバース、落ち口に立つ。帰りは、トラバースより1つ上の岩棚に登って懸垂下行かな。ノーザイルでのクライムダウンはリスキーに過ぎる、下山時はここが最後の重要ポイントになりそうだ。残置のリングボルトやハーケンがあるが、なかにはとんでもなく高い位置の残置があり、残置の主がここを通過したときは、残雪がたっぷりあったようだ。

ポイントの滝を越えるとしばらくは広河原。先程の小又川の河原程広くはないが、開放感あふれる谷だ。岩のウキも小又川程ではない。広河原をルンルン、と進むと15mほど直瀑に出くわす。右も左も巻くことは難しい。良く観察すると、滝の少し手前左手の岩が、脆いものの段々になっていて登れそうだ。滝の高さまで登ったところから落ち口まで5mほどトラバースできそうなバンドもある。加納さんがトップを切り私がすぐ後を続く。落ち口に出たところでザイルを出し、私がビレイ、加納さんはバンドを戻り、ハーケンを一ヶ所決めセルフを取り、そこからザイルを下に張る。1人ザイルを持って登ってもらい、もう一本のザイルをバンドにフィックス、落ち口側はハーケンを打つ。プルージックでバンドまで登り、バンドのトラバースはカラビナ通し、全員無事直瀑を通過する。先の3段斜博を「カスミの大滝」というのか、こちらが「カスミの大滝」なのか、迫力と恐さは3段斜瀑、でもこちらは直瀑、さて真相は如何に?

直瀑をクリアすると、谷は「沢登り」らしくなる。眩しい光に水が煌き、岩肌が磨かれて美しい。しばらくナメやオチを楽しんだら、崩壊地帯に入る。ホールドが脆い崩壊しつつある廊下の奥の小さな滝を気合一発シャワーで越えると遡行は一段落の雰囲気。荒涼とした谷が左にクランクするように続いている。クランクの手前で左手に小さな支流が入っているが、これを詰めるかクランクの先を登るか、迷う。結局米澤さん偵察に行って、クランクの先を行くことにする。ガレの谷に左右から壁が迫り、圧迫される感じ。クランクを抜けると、ずっと上までガレが続いている。適当な山腹を強引に登り、薮を一漕ぎしたら剱の雄姿が視界に飛びこんできた。天狗の踊り場の一画に出たようだ。

少し進み、岩が点在する気持の良い場所で休憩する。剱の絶嶺はガス巻いて見え隠れしている。遮るもの何も無い展望も良いが、ガス巻く眺めも最高だ。腹にものを入れたら早々に下山開始、今日は天狗の踊り場に出たところで半ばとは言えない山行なのだ。

剱に向かって少し進んで左手の小沢を下ると、さっきの詰めようか迷ったところだった。崩壊を下り、シャワーで越えた小滝を懸垂、滑を駆け下り、下山最初のポイント15m直瀑に出る。まず、福田さんがトップでトラバース、下行地点にきっちりとハーケンを決め、ザイルを降ろし懸垂下行。全員が続いて、最後に加納さんがトラーバースフィックスのザイルを回収し懸垂する。思いのほか時間がかかり、少し心配になってくる。

直瀑を下行したら今度はあの恐い3段30mの斜瀑の下行だ。右岸にハーケンで支点を取り、確保されたトップが微妙なトラバースをクリア、トラバースした辺りかそこから1つ上(2mホド)の岩棚から懸垂で下行、という作戦だ。しかし、右岸にハーケンが決まらない。楽に入るものはすぐに抜けて支点にならないし、楽に入らないところはニッチもサッチも入って行かない。仕方なく左岸に打ったら何とか二つ決めることが出来た。福田さんがダブルでビレイされてトラバースをクリア、岩棚に登りザイルを垂らす。続いて私が2mほどゴボウ引いて強引に登るが、これを全員がするのはちょっと危険なので、上から引き上げることにする。全員引き上げたら、残置のハーケンとリングボルト(十分しっかりしていた)を支点に懸垂することにする。8mm×30mダブルで下行するが、最後数m届かず、そこはもう一本ザイルを繋いで川床まで下り切る。この作業に2時間程かかってしまい、途中で日没が必至となってしまった。ただ、何とか明るいうちに大日山谷の出合いまでは達することが出来そうで、天候も十分良く、非常にこれはラッキーだった。

大日山谷出合いからは小又川の広河原を下る。しばらくで日没、真っ暗の中、ヘッ電を頼りに下行する。7時過ぎには車に帰ることが出来ると思っていたが、これはとんでもなく甘い考えだった。暗い川は危険がイッパイ、とてもぶっ飛ばして下るなんて出来ない。真っ暗な中での渡渉も出て来て緊張する。あまりに時間がかかるので、思わず「暗くて車を見過ごし通りすぎたんじゃないか?」と疑心暗鬼にとらわれるが、さすがにそれはない、ここまできたら焦ってもしょうがないので、とにかく安全に車を目指す。慎重にゆっくりと下行し、8時前、ようやく暗闇に車のテールライトがヘッドランプの光でうっすらと浮かびあがった。無事、車に辿り着き、着替えたら今度は真っ暗な林道を慎重に小又橋を目指す。ここで事故ったら元も子もない、緊張しつつも小又橋に至り、念願の山行は終了しました。

宿題はいくつもあるが、1つは「遡行図」。せっかくの秘境の谷の念願の山行なので、これを機会に遡行図を書くことを学んでみようと思う。人の遡行図は多いに当てにするくせに、自分では書いたことが無かったので、何とかしてみたいです。気長に待っていて下さい。


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