山行報告    長次郎谷・剱岳・三の窓・池ノ谷


















山域・山名
剱岳・池ノ谷
山行形態
山スキー
山行日
2006年5月4日〜5日
メンバー
安田(L) 金光 清河 田中 千々石 松井

概要

当会はここ数年山スキーの活動が盛んである。平成18年1月のある日、当会の尾田さんから、今シーズンは富山労山40周年の年なので、ぜひ山スキーで長治郎雪渓を登り剣本峰へ登頂し馬場島へ滑らないかという提案があった。

私は、平成14年に大窓越え、15年に小窓越え、16年に三の窓越えを行い、富山の山岳会として剣周辺にこだわってきた。今回は山スキーで剣本峰登頂にこだわりたいという2人の考えが一致し今シーズンの目標となった。

ゴールデンウィークに行くことになったのだが、残念な事に発案者の尾田さんが仕事の関係で参加できなくなってしまった。また今年は記録的な大雪で、剣山荘・剣沢小屋が使用できず剣御前小屋しか営業していない。一番気になる天候は、幸いにも晴れが続き心配はいらないが、今年の雪は山小屋もつぶれる程の大雪だったので、雪の状態が想像も付かず心配であった。

5月4日(木)快晴 アルペン村〜室堂〜雷鳥沢〜剣御前小屋

9:00 アルペン村。若い田中君、千々石君は、車のデポを兼ねて立山川から入ってもらい、私達4人は明日に備えゆっくりバスでアルペンルートで入ることにした。
10:30 室堂。ほんの1時間ほどの距離だが雪はまだ豊富である。
11:30 2300m 雷鳥沢。連休は晴天が続くせいかテントはかなり多い。
13:40 2750m 剣御前小屋。田中君、千々石君は若いだけあってすでに着いていた。剣御前小屋しか営業していないため超満員だった。6畳の部屋に14人の宿泊という状態だった。
山岳警備隊が常駐しているので、登山届けの提出を兼ねて明日のコースの状態等を聞く。今年は雪の量が多いので長次郎雪渓の左俣へは熊の岩から回らなくても直接登れるとの事、長次郎のコルから池ノ谷乗越までは稜線は通らない方が良い、池ノ谷ガリーの滑降は特に注意が必要、池ノ谷ゴルジュは通らないほうが良い等アドバイスを受ける。
部屋に戻り全員で明日のミーティングを行い、長次郎のコル到着が10時を過ぎるようだと剣本峰はあきらめることになった。夕食は5時過ぎからバイキングでした。
夜、富山平野の夜景が最高にきれいで、まるで絵はがきか山岳雑誌の写真を見ているようでした。

5月5日(金)快晴 剣御前小屋〜長次郎雪渓〜長次郎コル〜剣本峰〜長次郎コル〜池ノ谷乗越〜池ノ谷ガリー〜三の窓〜池ノ谷ゴルジュ〜馬場島

5:00 2750m 剣御前小屋出発。早朝はやはり寒い。日の当たっていない斜面はカリカリでクラストしているが特に問題はなかった。剣沢小屋・剣山荘は完全に雪に埋まっていた。また、周辺にはテントは20張りぐらいあった。剣沢雪渓の滑りは、剣岳を正面に見ながらスケールの大きい山岳スキーを楽しむことができ何回来ても気持のいい斜面である。
5:40 2050m 長次郎谷出合。八つ峰登はんのパーティーは何組かいたが、スキーのパーティーは私達だけであった。朝食用の弁当を食べ大休止し長次郎のコルを目指す。
コル到着が10時を過ぎると剣本峰はあきらめなければならないため、休みはなるべく取らずに登る。熊の岩が見え右俣・左俣も見えてきた。
昨日の山岳警備隊の話だと、雪が豊富で左俣から直接コルへ登れるという話であったが、左俣はかなり大きな雪崩で、とても行けそうには無かったので、右俣から熊の岩の上部からトラバースし左俣に出た。気温が上がりかなり熱くなってきたので雪崩が心配になる。コルに近づくにつれて傾斜がきつくなるが全員シールでコルまで登ることが出来た。
9:02 2950m 長次郎コル。時間的にも十分余裕があるのでスキーをデポしアイゼンに履き替え予定通り剣本峰を登頂することになった。清河さん、金光さんは残念ながら待機する。稜線は雪が付いていないと思っていたが予想に反しビッシリ積もっていた。コルから最初の登りは急な斜面だがトレースがしっかり付いていた。
10:05 2999m 剣本峰。まず目標としていた剣本峰に登頂することができた。快晴の中360度のパノラマを満喫し全員で記念撮影する。まだ先が長いので早々に下る。
10:20 長次郎コル。コルへの急斜面は懸垂で下る。下る途中で当会の八ツ峰パーティーに会い池ノ谷乗越までの稜線の状態を聞く。最初の予定では長次郎雪渓左俣を滑り右俣へ登り返して池ノ谷乗越に出る予定であったが、稜線はビッシリ雪が付いていてトレースがバッチリなので問題ないとアドバイスを受け稜線から行くことにした。
12:00 2850m 池ノ谷乗越。八ツ峰やチンネの側壁と剣尾根にはさまれた狭く急な溝である池ノ谷ガリーを覗く。先が見えないくらいの急斜面でビビッテしまう。なおかつ滑ると雪崩れそうなのでスキーをザックに付け、急斜面のため後ろ向きで一歩、一歩確実に降りる。途中チンネが見え、去年の夏登った時のことを思い出した。ある程度降りたら傾斜も緩みスキーで滑る。
13:20 2650m 三ノ窓。ここまで来ると、これから先の池ノ谷から馬場島までは2年前に経験あり状況がある程度わかるので安心感がある。前回来た時はガスの中あまり視界は良くなかったのだが、今回は快晴で両岸の岩壁がはっきり見え、威圧的で独特の雰囲気あり不気味だった。
14:20 1850m 二俣。ここまで来ると広く安心なので休憩していると、右俣から単独で滑ってくる人がいた。その人は山スキーメーリングリストでは有名な群馬の赤木重機の木村さんだった。話を聞くと、私達と同じ剣御前小屋に泊まり今日、平蔵谷から剣本峰に登り本峰から直接、池ノ谷右俣を目指して滑ってきたそうです。木村さんは池ノ谷ゴルジュを突破するとの事、私達は昨日、山岳警備隊のアドバイスを受けゴルジュは通らず小窓尾根を乗越すつもりだったが、みんなで相談しスキーでゴルジュを抜けるチャンスは一生涯ないだろうと言うことで突っ込むことにした。
15:00 1450m 池ノ谷ゴルジュ。ゴルジュの中は落石が散乱し、いつ落石やブロック雪崩れがあるか、周りを気にしながら滑っていた為とても快適なスキーとはいかないが、両岸の岩壁がせまる独特の景色はあまり見ることはできない貴重な体験が出来たと思う。途中から落石・泥・木屑等のデブリのため滑ることが出来なくなり、スキーを脱ぎ担ぐことにした。
スキーを担ぎ歩いていると何やら「ゴー」という大きな爆音がした。後ろを振り向くと雪崩れが襲ってきた。最後尾にいた金光さんが巻き込まれ、転倒して2〜3回転してようやく雪崩れが止まった。金光さんは放心状態のようにボーとしていたので、また雪崩れが起こるかもしれないと思い、立ち上がって非難するように指示する。幸いにも雪崩れはおこらなかったが、金光さんは顔面に数箇所打撲し、ストックが折れ、サングラスが壊れた。しかし大きな怪我はなかったのでひとまずホットした。すぐ目の前で雪崩れが起こり、人がまきこまれたのを見たのは初めてだったので、あらためて雪崩れの恐ろしさを再認識した。
16:05 976m 取水口。
16:30 760m 馬場島。
17:30 アルペン村。

今回の山行は、発案者の尾田さんが行けなかった事は残念でした。2日間とも快晴で申し分なく天候には恵まれたのですが、気温が高めで逆に暑いくらいでした。

最初の計画から何箇所かルートを変更(長次郎雪渓・池ノ谷ゴルジュ突破)しましたが、現場に来て雪の状態や天候などから判断しルートを変更したことは的確な判断だったと思います。しかしながらゴルジュで小雪崩れを喰らってしまったという反省点もありますが・・・。

今回は、山スキー以外に剣本峰登頂、懸垂下降、北方稜線登はん、池ノ谷ゴルジュ通過、雪崩と、変化に富みいろいろな体験をすることができ、今までにないスケールの大きな山岳スキーを楽しむ事ができました。また、今回のように記憶に残る大きな体験をもとに、次のステップアップへつなげて行きたいと思います。


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