秋の剱岳北方稜線

山行日
2004.10.10〜11
山域山名
剱岳北方稜線(大窓〜池の平〜剱岳〜早月尾根)
目的
剱岳周辺の紅葉を楽しむ
メンバー
安田(L)、尾田(SL)、鈴木、山岸(記)
コースタイム
10月10日
白萩川取水口6:40 → 大窓12:00 → 池ノ平小屋 19:00
10月11日
小屋出発 7:00 → 小窓雪渓 7:50 → 小窓 9:00 → 三ノ窓 11:30 → 池ノ谷乗越 12:00 → 剱岳頂上 13:40 → 早月小屋 16:00 → 馬場島 19:30
大窓谷を下る 大窓谷を下る
小黒部谷・大窓谷
出合い付近
小黒部谷の
スノーブリッジ
池の平小屋 小窓雪渓
小窓付近 三ノ窓近し
剱山頂は近い 山頂にて

今回の山行は、紅葉の裏剱を見たあと北方稜線を通って剱岳に登り、早月尾根より下山するというルートで、当初はテントで2泊3日の予定でした。ところが初日は雨で中止となったので、小屋泊まりで1泊2日に変更しました。

車1台を馬場島駐車場にデポし、もう1台で白萩川の取水口へ向かいました。そのときの天候は小雨とやや本降りが繰り返されていて、まだ車の中で決行か中止か判断できないでいました。しかし元々1泊では時間的に余裕がないのでぐずぐずもしておれず、大窓のコルに13:00をタイムリミットとし、また今以上の天候悪化の場合でも引き返すことにして出発しました。

まずいつもどおり右岸から最初の堰堤を登って堰堤上を左岸に渡ろうとしたら、大水で渡ることができず、堰堤下に戻って適当なところから左岸に渡りました。池の谷出合までは水の勢いが強く、ときにはザイルを掴みながら流されないように3〜4回の渡渉を繰り返しました。話では8月の大雨の影響らしいのですが、周囲は土砂崩れの跡があったり、上流から新たに岩が転がってきたようでした。しかしそのおかげで中仙人谷の滝が崩れており、楽に越えることができました。

このあたり(東西中仙人谷が出合う三又)からは沢の水量が減り、ガレ場の登攀っぽくなってきました。この中仙人谷を詰めれば大窓なのですが、先にはさらにいくつか分岐点があるため、どの谷が大窓に通じるのか、とてもわかり辛くなっています。中仙人谷の滝から大窓までの正しいルートは、最初の二俣を左、2番目にすぐ出てくる二俣を右、3番目を左、その後右手に走る藪を被った小さな尾根に取り付き、旧鉱山道に合流して大窓へ抜けるというものじゃないかなと思いますが、定かではないです。当会の過去の記録も参考にしてください。今回はどうやら3番目を右に入ったようで、急傾斜のガレ場を超えるのに難儀しました。旧鉱山道のある尾根には、正しいルートとは反対に右から取り付き、頑固な藪を漕いで旧鉱山道に出られました。ここからは藪もおとなしくなり、ひと登りで大窓に到着しました。正面(東)には後立山連峰が見えましたが、両サイドは北に白はげ、南に大窓の頭に続く尾根に挟まれており、平野部から見るほど広い場所には感じませんでした。ここは風が強かったのですが、大窓の頭側の大岩の陰に隠れると風が凌げました。

大窓からは小黒部谷へ下ります。初めはガレ場、続いて長い雪渓が現れます。沢靴では雪渓上で激しく滑ったり転んだりしたので、軽アイゼンを装着すると安心して下れました。やがて雪渓が切れ、今度は沢を下ります。この沢は小黒部谷の支流の1つで、この先の池ノ平小屋方面から流れてくる別の支流と合流するのですが、その合流地点からは池ノ平からの支流を遡ります。すると途中で稜線上に池ノ平小屋が見えてきます。もうすぐ小屋に着けるんだ、と考えながら順調に沢を登っていたのですが、沢の先に巨大なスノーブリッジが現れました。見た目は丈夫そうなのでくぐれそうだったのですが、念のため左から高巻きました。ところがこの高巻きもひどいガレ場で、藪に取り付いて水平移動してもじきにガレ場が上方に広がってきて、いくら高度を上げても限がありません。すると尾田さんが降りられそうなルートを見つけて下降し、ようやく4人とも無事沢に降り立ちました。この高巻きに時間を費やしてしまい、スノーブリッジの下をくぐったほうが良かったのかもと思いもしましたが、スノーブリッジのほうを振り返ると、その後半はズタズタに崩れ落ちていたので、高巻いて正解でした。

薄暗くなってきましたが、稜線上の小屋まで再び沢の登攀です。この先にも沢の分岐がいくつか出てきました。最初の二俣は左へ進みます。次の三俣は、後から考えると右のような気がするのですが、このときは真ん中へ進みました。空き缶やビニールなど年季の入ったゴミが目立つので、きっと小屋に通ずる道だろうと。この辺りからヘッドランプを付け、ガレ場の次は頑固な藪を進みます。すると右下のほうに小屋らしき明かりが見えました。いつの間にか小屋より上まで登っていたようです。小屋に近づこうとなるべく右に向かったのですが、ガレがひどかったのでそのまま直登し、ようやく尾根に出ました。そこは池ノ平小屋から仙人山へ通じる踏み跡道の上で、小屋までは50Mほどのジグザグ道を下ります。最後に鈴木さんが藪の中でめがねを落とし、かなり視力が低い状態で藪を抜けてきました。そのため北方稜線は無理なので、明日は室堂へ下山するという話になりました。尾田さんは明朝めがねを探しに行くと言ったのですが、見つかるはずがない、とみんな思っていました。明日は室堂へ下りるものだと決め付けていたのですが・・・

2日目の朝は5:30に朝食をとり、ぼちぼち出発の準備をしていました。小屋の外へ出ると、安田さんが昨晩直登してきた藪山の途中から小屋まで水平のトラバース道を見つけました。それを通ればだいぶ楽に小屋に到着できたのに・・・と昨日の藪こぎルートを目で追っていくと、尾田さんが藪から出てきました。「あった〜!?」と呼びかけると、頭の上で丸を作りました。これには驚きました。これで北方稜線に行けます。

7:00に小屋を出発し、小屋の池ノ平山側から出ている踏み跡道を通って小窓雪渓に向かいました。天気は小雨でしたが、じきに止んできました。踏み跡道といってもなかなかしっかりしており、フィックスのトラロープも要所に設置してあります。雪渓を挟んで対岸に巨大な滝が見え、やがて道は急降下して雪渓に降り立ちます。振り返ると雪渓側から踏み跡道の入り口がわかるように、岩に丸印がいくつもしてありました。小窓雪渓は融けそうな様子はなく、安心して登れました。そして小窓に到着。いよいよ北方稜線に合流しました。ガスったり天気が悪いと通行困難と言われていましたが、天気はまずまずです。

なるべく小窓雪渓側を歩くのが基本とのことで、草つきの踏み跡を急登したあとは山腹を小窓雪渓側にトラバース気味に進みます。やがて小窓ノ王を右に巻くように稜線に上がると、そこは風が強く吹き付けていました。今度は小窓ノ王の池ノ谷側を巻くように下降すると、フィックスロープがあり、再び登ると三ノ窓に到着です。ここから池ノ谷ガリーを登りきったところが池ノ谷乗越で、ガリーを振り返るとガスが迫っていました。

ここからの急登も長次郎雪渓側を通るのがよいそうですが、長次郎の頭を巻くところで、初めは長次郎雪渓側を試みたところ難しかったので、池ノ谷側を巻きました。こちらも怖かったです。このあたりからガスでちょっと先がわかりにくく、また踏み跡がどれも正しく見えるので不安でした。でも結局予想通りの時間に頂上に到着しました。

ここからは一般登山道なので目印が多く、迷うことはありません。みんな空腹や喉が渇いたので早月小屋でなにか食べようとか言ってたのですが、到着したときには既に小屋閉めの後でした。熊が怖いのでりんりんベルを鳴らしながら黙々と降り続けます。17:30頃に1400M地点でヘッドライトを装着し、途中からシトシト雨に降られながら、ついに馬場島に下山できました。お互いガッシリと握手を交わし、無事下山できたことを喜び合いました。

今回は2日間で見所満載の充実した山行に参加できて、とても楽しく、いい経験になりました。裏剱はガスがかかって見えなかったので、来年は剱沢小屋〜仙人池ヒュッテで紅葉の裏剱&美食山行ができればなと思います。


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