去年からの課題、私にとって山スキーでの今シーズンの目標「朝日岳北方稜線を滑べる」、行って来ました。天候に恵まれ、強力なリーダーにも恵まれ、快適な中俣避難小屋に泊り念願を果たすことができました。天気と小屋とリーダーには感謝の言葉もありません。
黒岩への稜線を登る | 黒岩山頂上 |
黒岩山から黒岩平と 彼方の長栂山 |
1900m付近から 振り返る |
朝日岳より白馬方面 | 朝日岳より剱岳 |
朝日岳より白馬方面 (アップ) |
朝日岳最後の登り (へろへろ奥野) |
山頂にて (左から尾田、奥野) |
山頂にて (左から尾田、奥野) |
黒岩山付近 | 黒岩山を滑べる 滑べりのハイライト |
常願寺防災パーキングを11時に出発、下道を糸魚川の奥、小滝ヒスイ峡を目指し車を走らせる。天候は予報よりも少し悪く、曇りで肌寒い。市振の道の駅で昼食、糸魚川から小滝を経てヒスイ峡に入る。デンカ発電所のゲート少し手前の駐車スペースに車を停め、身仕度整え林道を中俣避難小屋目指す。去年は多くの観光客が居たが、今年はほとんど居ない。釣り客の車が二〜三台だけ。
林道は、荒れていた。釣り客にも全く出会わない。残雪は去年よりずっと少め、小滝川の水量は去年よりも多少多い感じ。曇って気温が低めなのと、去年の経験から荷を軽くしたため、比較的良いペースで進み、早い時間に小屋に到着。小屋は前年の晩秋から誰も使ってないのか、床にホコリが溜まっていた。掃除して土間の焚き火場に火を起こし、夕刻を過ごす。就寝前に外に出てみると、ずっと曇っていた空が綺麗な半月と星空になっていた。
さて今日は、朝日岳頂上に登り往路を滑べりそのまま荷をまとめ下山帰富するという強行軍。5時前、小屋横の水場の向うの急登を登り始める。小屋周辺に残雪はほとんど無い。鎖の下がる急登を朝イチで登るのはちょっとキツイ。それでもこの登りはホンの少しだと分っているので、とにかく頑張る。700m位から雪に乗る。尾田さんは800mからスキーを履くが私は900mを過ぎるまでスキーを担ぐ。
900mで一気に視界が広がる。残雪の山々が屏風のように三方から私達を取り囲み、登って来た方向を振り返ると新緑の尾根の向うに小滝川。更に一登りで中俣山。ここから少し地形が複雑な部分があり、ちょっと下り窪地を過ぎるように進み、雪が切れている小ピークを右手よりトラバースするように進むと、黒岩山からの顕著な稜線上に乗る。黒岩山目指し高度を上げると、周囲の景色もどんどん広がる。登り前半のハイライトである。
黒岩山に到着は9時前、まずまずのペース。山頂からはこれから登る黒岩平から朝日岳に続く稜線が広がり、反対側はずっと日本海まで続く栂海新道の稜線を望む。一息入れたら出発。黒岩平は思ったよりもずっと地形が複雑なうえ、今年は雪融けが早いのか、所どころシラビソの密生したヤブが行く手を遮り、中々に効率が悪い。前日のものと思しきスキーで滑べったトレースが一つ、1900m付近では、遠く雪倉から縦走して来たツボ足のパーティとすれ違ったり、意外と人くさいコースだ。残雪期に栂海新道を日本海まで辿るのは大変だろうが、ここは秘かに人気なのかな、と感ずる。
長栂山には登らず東から巻くように通過、照葉の池は雪で埋まった西側を通過する。何れも帰りは登り返しがありそうで、一気に山頂から黒岩平まで滑べろうと言う目論見はちょっとばかり甘そうである。
吹上のコルに到着した頃、私はバテを感じ始めていた。尾田さんは元気一杯でガンガン飛ばすが、とても付いて行けそうに無い。コルは風の通り道で、雪が消え夏道が露出している。稜線東側には雪が付いているので、滑べりは問題無さそうだ。尾田さんはその東側の雪を拾いスキーで登り切ってしまったが、私は担いで夏道を辿った。
あと山頂まで150m地点で大勢のテレマーカが降りて来た。蓮華に下ると言う。彼らに励まされ、再びスキーを履いて最後の登りを頑張る。尾田さんに頂上で迎えられ、何とか到着。山頂は遮るもの無い大展望、白馬から来たと言う強者スキーヤーや蓮華からピストンすると言うスキーヤー、さっきのテレマーカ集団など、山スキー気狂いは思った以上に大勢居るようだ。
少し休んだら滑降準備をし滑べり始める。出だしは快適な斜面、ターンを決め一気に下ってしまうと今度は長栂山を巻く登り。これが辛かった。尾田さんはガンガン登り返して行くが、私はもうヘロヘロで中々進まない。登り返した後の黒岩平への滑べりも、期待した程に一気には行かなかった。シラビソのヤブが行く手を遮り、良い斜面も続かないのだ。もっと雪が多い年とか、もう少し早い時期でこれらのヤブがもっと隠れていたらどんなに快適なんだろう、と思いながら、やっとのことで黒岩山に滑べり付いた。
黒岩山から中俣山との鞍部への滑べりこそが今日のハイライトだった。適度な斜度、無木立の尾根を思い通りにターンしながら一気に滑べる。わずか5分にも満たない時間だが、至福のときだった。あとは、中俣山へ登り返しとトラバース、中俣山下の樹林の滑降。最後はスキーを担ぎ、足スキーで登山道に出て、小屋に辿り着く。
さて、荷をまとめて林道を歩かなければならない。小屋に置いて来た家財道具一式担いで林道を下る。ザックがグッと肩に食い込む。午後7時前までは明るいので、それまでには何とか車に辿り着きたかったが、中々歩が進まない。最後は薄暗くなり、峡谷の間の空に半月が美しく輝き出した頃、ようやく車に帰り着くことができた。14時間近い行動時間で、充実していたが心底疲れた。最後、富山まで運転してくれた尾田さんには本当に感謝です。有難うございました。
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