今年の年末年始は、山ノ神尾根で大日岳を目指してラッセルしつつ過ごそうと言う企画。去年は槍ヶ岳を目指しながら悪天候に阻まれ達成できなかったので、そっちへリベンジしようかとも思ったが、隊長の計画を聞いて真冬の大日岳もなかなか魅力的、今回こそ登頂を… で大晦日の早朝、伊折に向かって車を走らせた。
早朝の伊折は、剱岳に向かう人達の車でいっぱい。一番奥の方、雪の路肩に強引に駐車して、スキーを履いて出発。小雪だが道の雪はさほどでもない。途中、カメになった4WD車に出逢う。伊折で通行止を知らず、入り込んだら立ち往生したと言っていた。警備隊の雪上車で救出してもらえるかな。
3時間近くかかって小又橋到着。河原は一面雪野原、やや重い雪をラッセルしながら進む。視界が悪く、河中に架かっている仮橋の位置がわからず、ちょっと困る。すこし進むと、堰堤があってその先に仮橋が架かっていた。思った以上に進んでいなかったようだ。右岸にうつってから最初の堰堤は、崩れ残った作業道跡から簡単に超えられる。さらに進んで問題の堰堤に到着、11時40分。
問題の堰堤は、下見のときもザイルを出して超えたもの。今回は、先ず隊長が空身で堰堤上にあがりザイルをフィックス、スキーを引っ張りあげてからザックを担いで確保してもらいながらヨジ登った。ザックが重くてちょっと大変。私が上がったら今度は隊長が下りて上で私が確保、ザックを担いで上がって来る、という手順で、時間がかかってしんどい場所である。河中の人工構造物でこんな苦労するのは、なんかやり切れない思いがあるが、まぁ何とか超えることが出来、一安心。
もうこの堰堤を超えたら、あとは幕場へひたすらラッセルするのみ、とタカをくくったのが間違いだった。川底に金属のような破片が沢山きらめいて見える「砂金河原」を渡って左岸にうつる。そこから先、もうちょっとだ、と思ったのが間違いだった。ガスで全く位置がわからず、下見できた幕場予定地への方角がわからない。地図と照らしあわせても、何だかよく判らない巨大な堰堤があるし、一時間以上彷徨ってしまいとうとう最後に現在地として確認できたところまで戻ることにする。戻ったところで設営、第一日目は視界不良で終った。
朝、テントから外をながめて位置を確認、随分予定地点よりも下流で設営したようだ。身仕度を調え、尾根取り付きへ向かって出発。取り付きまでけっこう時間がかかった。取り付き地点の木陰にスキーをデポ、カンジキを履いて登りはじめる。
最初は、胸をつくような急登。二時間程で尾根は左に折れる。赤布をうって進むが、この後、あまりの気持のよさとラッセルのしんどさでつい、赤布をうつのを忘れてしまった。天気は上々、やがて左手に剱岳が見えてくる。右手の大熊山頂上付近には、豆粒のような人影ふたつ。天気が良いと本当にすばらしい尾根だ。明日、もう一日天気が持てば、行けるかも…と思いながら、1620M 付近に設営する。ラッセル以外には問題は無く、危険個所もない。
夜半から風が強くなり、外は吹雪いているようだ。夜明け前、テントの外を覗いてみたら、真っ白で風強く、昨日のトレースは全く消えていた。朝飯を食べたあと、半ば停滞を覚悟しシュラフにもぐりこむ。ラジオを聴いていたら、なんと明日から大荒れと言っているではないか、これはグズグズできないと撤退を決断、吹雪きのなかを下山開始した。
下山開始した頃は、さいわい少し風もおさまり、視界も50Mくらいはありそうだった。それでも、登って来るときは気づかなかったが、支尾根がいくつも絡まるように派生していて、三度迷い尾根を下りかけてしまい、その都度登り返すことになった。トラバースすれば楽に行けるのだろうが、降雪直後の急斜面のトラバースなんて危険なことは出来ない。わずか20〜30M登り返すだけでクタクタになる。やがて、最後に赤布をつけた大きな立山杉のあるジャンクションに到着、ほぼ安全圏にたっしたことを知る。わたし等はこの大木を御神木とおがみ、無事を感謝した。
御神木からは、もう一息で尾根取り付きに降り立った。登るときは大変だった御神木までの急坂も、下れば本当にあっというまだ。デポしたスキーを回収し、河原を進めるだけ進むことにする。が、新雪がはんぱじゃなく深い上に重く、私が先頭になっても前に進むことが出来ない。ほとんど隊長にトップを行ってもらい、砂金河原を渡って少し下流で設営した。いざ設営、と言うときに酷い寒けにおそわれ、ほとんど身体が動かなくなってしまい、またまた殆ど隊長に設営してもらった。
3日の朝は、高曇りでまずまず穏やかだった。気温は高目で、低気圧が日本海に入っているのだろうか。一晩寝たら、元気一杯になった私は、朝一番トップを行くことになった。問題の堰堤まで約30分。今度は先ず堰堤上に空身で登ってスキーを引っ張り挙げそのまま向こう側におろし、ザックは二分の一システムで引っ張り挙げ、やはり二分の一システムで向こう側におろし、身体は空身で懸垂でおりた。
堰堤を超えたあとも小又橋までは遠く、空腹で疲れきった頃ようやく車道に出ることができた。スキーのシールをはずし、一気に伊折まで…という予定だったが、傾斜がゆるい上に登り返しもあって快適とは言えなかった。歩いても、たいして変らないかもしれない。13時40分、ようやく雪をいっぱいかぶった車に到着。
今回は、残念ながら大日の頂上を踏むことはできなかったが、勉強になった山行だった。まず、現在地の確認力の向上。雪が深いと、思った以上に進んでないので、もうこの辺りだろう、と判断するととんでもないところへ行ってしまうことがある。カンではなく、しっかりと地図を読む技術が必要だと痛感した。次に赤布。登りのトレースなんて一晩で完全に消えてしまう。登るときは、まず上を目指すから迷いにくいが、くだりは難しい。天気と気持の好さに酔ってしまい赤布を忘れると痛い目にあう。今後の安全登山に今回のことを教訓として活かし、レベルアップして、またチャレンジしたいと思う。
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