写真はここを御覧下さい
上の廊下は、かねてからの私の夢だったのだが自分には技術・日程面で無理だと思い、なかばあきらめていた。が、下降を選択して前日の内に折立に入り早出すれば2泊3日が可能であることに気がついた。日程面は、これで解決できても技術面の不安が残っていた。しかし天候の条件さえよければ水量が少なくそれほど高巻きの必要もないであろうから、晴天が続くことをずっと祈った。祈りが通じたのか1週間晴天が続き山行中も晴れ予想となり条件的に申し分はなかった。1週間ほど前から荷物を個々にビニール袋に入れ、それらをまた漬物袋に入れ2重にパッキングをして準備を整えた。志水哲也の「黒部八千八谷に魅せられて」の上の廊下を何度も読み直してコースの概要を頭にたたき込んだ。そして期待と不安の中、出発の日を迎えた。
8月17日(金)朝、リュック、着替え食料等、必要な物を車に積み込み会社へ出社する。5時30分退社、早めに帰らせてもらい途中コンビニやほかほか弁当に立ち寄り焼肉弁当を買い直接待ち合わせ場所のアルペン村へ向かった。6時40分アルペン村着、すぐに宮崎さんの車を置くために立山駅へ向かい有峰林道を経由し8時20分折立着。折立のキャンプ場の道路は県外ナンバーの車でびっしりであった。キャンプ場で早速テントを張ったが、サラリーマンスタイルの自分は、なんともミスマッチであった。明日は3時半起床予定なので、外で空一面の星空を見ながら焼肉弁当を食べて早々に寝た。
3:30 起床
4:58 折立出発
車の中で寝ている人たちも何人かいたが、その人たちも出発しだした。
8:24〜37 太郎小屋
朝まだ早いので秋空のようにすがすがしかった。
10:16〜40 薬師沢小屋
登攀装備の女性2人・男性3 人のグループがいたので、どちらから来たのか聞いたところ「上の廊下から遡行してきた。」との返事だったので上の廊下の状況を聞いた。宮崎さんが、「もしかしたら志水さんのグループですか」と聞いたところ「そうです。志水さんはそちらです。」と指差したところを見ると、なんとその志水さんがいた。著書は拝見していたが本人を直接見るのは初めてでした。彼は長身で体もがっしりしていたが、山男というより若いお兄さんという感じがした。ミーハーになり一緒に写真を撮ってもらった。
11:33 A沢出合
暑い!早く沢に入りたい。
12:00 C沢出合
この辺から渓流シューズに履き替え、沢モードに入る。渡渉を繰り返す。水量は、ほとんど腰ぐらいであるが暑いのでそれほど苦にならなかった。その内、胸ぐらいの水量になり、さすがに胸がキューとなるくらい冷たかった。
14:00 立石奇岩
ついに奇岩が見えてきた、鋭くとがった岩の塔で今にも倒れそうであった。今回特に見たかった一つであり、ここまで来る事ができるかどうかも不安だったのでとてもうれしかった。この後、真っ青というかエメラルドグリンの綺麗な瀞が現れた。まるで運河のように流れが穏やかでかなり深そうであった。このような大きな瀞を見るのは初めてだった。高巻きするか泳ぐか相談したが高巻きすると30 分以上かかってしまうし危険も伴うので泳ぐことにする。毎週、水泳教室にも行っているし、下降なので流れに乗れば楽に泳げるだろうと、思い切って瀞に飛び込むが、すぐに自然を相手にして自分の甘さを思い知らされる。流れに乗るというよりもむしろ流されてしまい自分の行きたい方向には泳げず対岸の岸壁に激突、またリュックがじゃまして思うように息継ぎができなかった。悪戦苦闘の末どうにか足が届くところにたどり着いた。プールで泳ぐような訳にはいかなかった。宮崎さんは、お腹にマットを取り付けて難なく泳いでこられた。その後も瀞が連続したがすべて泳いで突破した。何回も泳ぐとさすがに体の芯から寒くなってくる、まして陽があたらない渓谷のため体の震えが止まらなくなった。
15:04 立石着
右岸のちょっとした高台にテン場があった。焚き火の後もあり、私達も枯れ木を集めて焚き火をして暖をとり濡れた衣服を乾かした。夕食はアルファ米で散らし寿司を作る。夕食を食べながら先はまだまだ遠く不安を感じながらも達成できるように、明日一日がんばろうとお互い励ましあい今日の反省と明日の行動の確認をして、早めに寝た。
4:00 起床
夜中寒くて何回か目が覚めた。宮崎さんも寒くてカッパを着て寝たそうだ。
5:24 出発
朝。山の朝は寒い。まだしばらくは泳ぎたくないと思っていたのだが、いきなり瀞が現れ早朝スイミングの歓迎を受ける。瀞が連続で現れたがすべて泳いで突破した。が、そこへ来て先の見えない瀞が現れかなり長そうで行き詰ってしまった。まず渡渉する事にしたが流れも速いためザイルを出す事にした。すると単独で下降してくる人が現れ、あっという間に高巻いて行った。軽装備でまるで忍者のようなその人はかなり慣れている感があったので、その人に付いて高巻く事にした。しかし、かなりの高度の所まで登らなければならなかった。ある程度の所まで登ると、瀞の全貌が見えたので、やはり高巻くのをやめて泳いで突破することにした。
9:03〜20 金作谷出合
陽が当りだす。体が冷え切っていたので、少し温まる事にした。
9:40 上の黒ビンガ
「上の廊下」の真髄。岸壁が稜線まで切り立ち、その迫力に圧倒された。泳ぎとへつりで突破する。
11:20 広川原
長い川原歩きが続く。
11:40 S字の廊下
流れが急であったので高巻くか泳ぐか相談する。宮崎さんは、途中途中の岩につかまりながら泳げば大丈夫だからと言われたが、私の方が怖かったので初めて左岸を高巻きする事にしてもらった。
12:30 下の黒ビンガ
増水時はザイルを使用して厳しい徒渉が連続するらしいが、今回は首ぐらいの水位であった。
ここまで来れば上の廊下も終盤でちょっと一安心する。昨日からいったい何回渡渉したであろうか、おそらく50〜60回ぐらい渡渉したと思う。腰ぐらいの渡渉はもう当たり前で要領もわかってきた。
14:20 奥黒部ヒュッテ
予定よりもかなり早く着いたため顧客は今のところ私達2人だけであった。15時30分より風呂に入った後、少し昼寝をした。目が覚めて外を見たら大勢の人が宴会で盛り上がっていた。みなみらんぼうさんのご一行(15〜6人)で、来年の「山渓」の夏山の取材のために記者、カメラマン等を引き連れての登山らしい。
5:00 起床
6:40 出発
10時20 分発の船に間に合えばよいので、ゆっくり出発すればよいのだがやる事もないし途中景色を楽しみながら行こうということで早めに出発することにした。みなみらんぼうさんも出発の準備をしていたので、またミーハーになり記念撮影を専属のカメラマンに撮ってもらった。渡船場まで湖でも見ながらのんびりとした登山道だと思っていたら、とんでもなかった。絶壁で高度感がある水平道で、まるで下の廊下のようであった。もっとも、ここは下の廊下の延長だからあたりまえなんだろう。
8:30 渡船場
景色を見ながらゆっくり来たつもりだが2時間も早く着いてしまった。しばらくしたら奥黒部ヒュッテで同室であった人も到着し、一緒にコーヒを飲みながらお互いの山談義をしているとあっという間に時間が過ぎた。
10:40 平の小屋
13;24 ロッジくろよん
13:55 黒部ダム
15:00 室堂
16:10 美女平
16:30 立山駅
食堂で軽く食事して、宮崎さんの車で私の車を回収するため折立へ向かう。
17:40 折立
念願の上の廊下の山旅は、二人ともけがも無く無事終わることができました。
上の廊下の距離は長いが、泳ぎの好きな人には是非お勧めです。夏の暑い日は海で泳ぐのもいいけど真っ青の瀞で泳ぐのも気持ちがいいものですヨ!!
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