山行報告 池ノ谷・北方稜線

--- 朝焼けのチンネ ---
朝焼けのチンネ
山域
池ノ谷・北方稜線
目的
縦走
期間
平成13年9月1日〜2日
参加者
森岡創(L) 中村秀樹(記)
コースタイム
●9月1日
6:00 取水口→6:35 小窓尾根取付き目印の大岩(縦走準備)→8:15小窓乗越→9:00 池ノ谷雪渓取付き→9:45 二俣→14:05 三ノ窓
●9月2日
8:10 三ノ窓→9:05 池ノ谷乗越→11:30 剱岳頂上→13:40 早月小屋(昼食)→17:05馬場島→17:50取水口

9月1日 白萩川取水口〜小窓乗越〜池ノ谷〜三ノ窓まで

池ノ谷は以前から私の最も興味のある山域で、秘密の領域に踏み入るようなワクワク感からか前日はほとんど寝られませんでした。結局1時間ほどだけ寝て早朝自宅を出発。集合場所へ向かうため常願寺川の橋を渡ろうとすると運の悪いことに数分前橋の上で事故があったらしくて、仕方なく迂回して集合場所へ向います。集合場所で森岡さんと合流してその日の昼食を買出し、馬場島の取水口へ出発。

取水口に着いて結局登山に出発したのは予定より遅れて6時でした。4・5回渡渉して小窓尾根取り付き目印の大岩に到着。渡渉はすべて膝下でした。下山には池ノ谷ではなく早月尾根を下るかもしれないので沢タビはデポせずにザックに詰め込み小窓尾根に取り付きます。

この時期、小窓尾根取付からしばらくは背丈ほどの藪で足元が見えないので進みにくく、しかも藪は朝露をもっているので上下共雨具をつけて進みます。5〜10分ほど進むと藪地帯を抜けて木の根を掴んで登る急登の樹林帯に変わります。道は比較的ハッキリしていて迷うことはなさそうですが、とにかく急でした。途中で池ノ谷ゴルジュが少しだけ眺められます。

---- 小窓乗越から見た池ノ谷 ----
取付きから1時間と少し、小窓乗越に到着。小窓乗越は4・5人が休憩できるほどのスペースがあり、そのまわりは藪と木が生えています。小窓乗越から小窓尾根縦走の道はかすかに踏み跡がついていました。小窓乗越からは鷹が羽を広げたような剣尾根と北方稜線が眺められ、かっこのいい剱岳の姿にしばらく見とれてしまいました。

休憩した後池ノ谷へと下ります。かなり急な下りが続いた後しだいにゆるやかになって、川に沿って上流へと道は続きます。道はずっと川に沿って遡り、そのまま雪渓取付きまで続いていましたが、川へと伸びている個所があり、そこから少しだけ下流に富高岩屋がありました。出入り口は下流側にあるのでちょっとわかりにくいのですが、白っぽい大岩を目印にするとわかると思います。そこには焚き火の跡があり、4・5人は入れそうな大きさでした。

しばらくして雪渓に取り付きます。その後雪渓をただひたすら登り9時45分二俣に到着。二俣でアイゼンを着けるつもりでしたが、二俣からその先を眺めると雪渓が切れていたので、とりあえずアイゼン無しでそこまで進むことにしました。二俣から雪渓を進むこと約20分。雪渓が途切れている個所に到着。そこから剣尾根側の谷底を覗くと高さは谷底まで10m程あり、雪解け水が激しく谷を流れていました。こんなとこに落ちたら一巻の終わりです。小窓尾根側から雪渓を降りて、悪いザレた斜面をしばらく登るとその先に数百mの長さの雪渓があり、そこからはアイゼンを着けて登ります。どんどん高度を稼ぎ雪渓の上端まで来ました。そこから三ノ窓まではもう雪渓はないようです。谷の水量はもうそれ程多くないので、谷の中をほとんど渓流感覚で進みます。谷の中は固定ロープを張ってある個所がありました。


--- 池ノ谷二俣 ---

--- 池ノ谷左俣を登る ---

 

--- 池ノ谷左俣上部 ---
谷を遡りますが、池ノ谷尾根の始まりあたりからは水の供給も無くなったようで流れは枯れ、アリ地獄のようなガレた斜面が三ノ窓まで延々と続きます。重い装備を担いでここを進むのは骨が折れました。登山開始から約8時間、剣尾根や小窓尾根のみごとな岩壁に励まされてなんとか三ノ窓に到着。
--- 三ノ窓より池ノ谷を望む ---
翌日は源次郎尾根を登る予定だったので、今日中に剣沢か熊の岩・剱岳頂上直下へ進む必要があったのですが、この時点で池ノ谷の谷底からガスが湧き、視界なくなったり、ちょっと切れたりを繰り返していました。そのためこれ以上進むのは危険と判断。今日は三ノ窓でテント泊することにしました。

三ノ窓はテント設営禁止ですが、テント場としてすっかり整理されていて、テントは全部で15張り程度の区画があり、この日は自分達も含めて4張テントがありました。

この時期三ノ窓で飲料水を得るには大変な労力が必要でした。水は三ノ窓雪渓を越えてチンネのずっと下流の方まで下るとチョボチョボと水が岩場から沸いています。水の補給は往復1時間。三ノ窓雪渓を下るのでアイゼン・ピッケルが必要ですし、さらに水場は落石が多そうな場所なのでヘルメットも要り難儀しました。さらにその水は念の為一度沸かしてから飲料水としました。

ガスが濃く、ポツポツと雨も降りましたが、テントで夕食を済ませしばらくするとゆっくりガスが晴れてゆき、富山平野に沈むすばらしい夕焼けを見ることが出来ました。そして7時半に就寝。

9月2日 三ノ窓〜本峰〜馬場島

-- 池ノ谷乗越から見た池ノ谷ガリー全景 --
翌朝は3時半に起床。朝食を食べ、鹿島槍から登る朝日に照らされたチンネ・ジャンダルムゆっくり眺め、そして1時間かけて辛い水汲みを行い出発の準備を整えました。その後空身で小窓王から小窓尾根へ散策に出かけます。

小窓王へは三ノ窓から一旦池ノ谷を少し下り、小窓王を斜上しているバンドを伝って進みます。このバンドはしっかりしていて幅も3m程あり、ロープも張ってあります。バンドを登りきると眼下には小窓・池の平山・小窓尾根・池ノ谷・剣尾根・チンネが一望できる絶景ポイントでした。三ノ窓まで来たのであれば是非ここまで来ることをお薦めします。

-- 池ノ谷乗越から見た池ノ谷尾根の頭への道 --
その後三ノ窓を出発。ジャンダルムP1・P2のすぐ横を通ると池ノ谷乗越まで一直線に続いている高度差約150mの池ノ谷ガリーが目の前に現れます。池ノ谷ガリーは「いやらしいガレた急斜面」と聞いていましたが、浮石はよかしてあり、道が出来ていて、その道にそれさえしなければそんなにいやらしいことはないという印象でした。ガリーの幅はけっこうあるのでガリーというより谷といった印象です。

池ノ谷ガリーをえっちら登りきるとそこは池ノ谷乗越です。池ノ谷乗越は幅5m程度のコルで、目の前には長次郎谷・八つ峰が望めます。見ると長次郎谷雪渓はかなり後退していました。そこからは池ノ谷の頭へ40mほど岩溝に沿って登るのですが、この岩溝の登りではちょっとしたミスで池ノ谷乗越まで滑落してしまう危険な個所で、とても緊張しました。岩溝を登りきった池ノ谷の頭は畳五畳ほどの広さがあり、剱岳頂上までの北方稜線が一望できます。その後しばらく普通の登山道状態で、踏跡を辿って進みます。途中岩板2枚に囲まれたスペースがあり、ここは緊急時テントを張るには絶好の場所です。さらに進むとちょっとしたピークがあり、そこは岩のバンドを使いトラバースします。ここのバンドの幅は1.5m程度と狭く、その下はほぼ垂直に切れ落ちているので緊張しました。

-- 池ノ谷尾根の頭から見た剱岳頂上と北方稜線 --
その後はまた普通の登山道状態の道を進みます。そして北方稜線最後の難関、長次郎の頭です。当初ここを越えるためのトラバースの道を見つけられず、長次郎谷側から高巻こうかと話しましたが、偵察を行いなんとか進む道を発見。長次郎の頭を無事越すことが出来ました。剱岳頂上から来た場合、長次郎の頭手前にはザレた斜面があります。前回来た時はそのザレた斜面の一番上まで登りきり、そこでトラバースの道を探しましたが、トラバースの道はザレた斜面の中腹あたりから始まっていて、踏跡があります。これに注意して探せばトラバースの道は見つけられるハズです。もし見つけられなかったり、雨で足元が滑るような場合は一旦長次郎谷を下って高巻いた方がずっと安全で確実です。その後は長次郎のコルに降り立ち、剱の帽子へ取り付いてひたすら登ると剱岳頂上です。

その後源次郎尾根の2峰まで行ってみる予定でしたが時間の関係で断念して早月尾根を下りました。早月小屋の主人に聞いたところ「池ノ谷から上ってくる人がけっこういる」とのこと。秘密の領域に踏み入れたような気持ちでいた自分としてはちょっとガックリの話でした。また、「大谷は落石がひどいが池ノ谷ではほとんど落石の音は聞いたことが無い」や「もう少し早い時期だと早月尾根から池ノ谷右又へ下る人もいる」といった興味深い話を聞くことができました。

その後つらい早月尾根を下り夕方5時5分馬場に到着。車は取水口に置いてあるので空身で35分歩いて取水口の車へ行き、馬場島で森岡さんと荷物を乗せて下山しました。

今回池ノ谷上部のガレた斜面の登りでかなり苦労することになりました。そのため秋に池の平へ紅葉を見るため池ノ谷を通る計画は消えました。もう少し早い時期であれば、もっと楽に、しかもお昼頃には十分三ノ窓に立つことは可能ではと思いました。

今回、剱岳北方稜線近辺の土地カンをそれなりにつけることができたので大変に有意義な山行きでした。


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