今夏、池ノ谷を三の窓へ詰めて天幕、頂上を経て早月尾根下山、と言う山行を計画して、下調べをしていたら、どうしても一度小窓乗越を越えて池ノ谷を見ておきたくなって、今回の山行となった。発案者の私がリーダーとなったが、実力者が揃ったメンバーで、ほとんど記録係。
午前6時、上市町役場に集合、宮崎さんの車に5人のって馬場島に向かう。午前7時少し前、馬場島から林道をしばらく登った白萩川取水口手前に到着。取水口手前は、広い駐車スペースがあり、タカノスワリへの高巻き道の入口には立派な道標もある。各自身支度を整え、午前7時5分出発。天候は曇っていたが、まずまず午前中は持ちそうだ。
一週間前、池ノ谷へ行って来た中村さんからあらかじめ聞いていた情報で、タカノスワリの通行は試みず、最初から高巻き道に入る。急登ひと登りで、トラバース気味に進む。木々の合間から、蛇行する白萩川が見える。道は、しっかり踏まれていて要所にはロープも張ってある。あっけなく池ノ谷出合下流の河原に降り立つ。ここから雷岩手前の渡渉地点までは、右岸通し。
小休止後右岸沿いに少し遡る。水量は多く、渡渉は大変そうである。池ノ谷出合付近では、流れが岸に迫りヘツる場面も出て来た。ロープをフィックスしているボルトが抜けているところがあり、安田さんが岸壁の上の薮を頼りに突破しようとしたが断念、ブラブラのロープを頼りに通過してみると意外と簡単に抜けることが出来た。
ヘツリの難所を突破して少し行くと、川の真中に大きな岩が見えてくる。どうやら小窓尾根の取り付きらしい。右岸通しに行くなら、雪渓の末端をヨジ登る必要があり、そうでないなら、水量が多く逆巻く流れを飛び石で左岸へうつる必要がある。雪渓の末端をヨジ登ろうと近付いてみるが、末端の壁は高さ3メートル以上ありそうで、まず無理。宮崎さんは雪渓の少し下流を渡渉する。安田さんは、飛び石で向こうに移ってしまっていた。私は、安田さんと同じ石を飛び、森岡さん、平井さんと続く。左岸から雪渓に上がって少し待っていると、渡渉して来た宮崎さんもやって来て、全員揃う。揃ったところで、小窓尾根の取り付きにて小休止。ここにも立派なミカゲ石の道標があった。ウドがちょうど芽を出したところ、お土産に少し摘んで行く。
ここからいよいよ小窓乗越までの急登を登攀開始。道は、迷うことないしっかりしたものだが、とにかく急登である。カタクリ、ショウジョウバカマ、ニリンソウ、ヤシオツツジ、そして極めつきは見事なシラネアオイの群落に励まされながら、必死に登ること1時間余り、小窓乗越に到着。ここを下る時は、十分注意しなければならないと思うが、登りは危険はあまり無いようだ。ただ、最初の200メートルぐらいは、落石に注意が必要。
乗越で中休止。ガスっていてあまり視界は良くなかったが、池ノ谷二俣が見えた。休憩後、池ノ谷へ下りる。急な踏み後を少し下ると雪が現れ、一つトラバースしたところで私はアイゼンを装着。安田さんはアイゼン無しでもう一つ向こうの雪渓まで行ってしまい、森岡さんはストックを頼りに下って行った。10分程で池ノ谷へ下り立ち、全員集合する。
下り立った池ノ谷は、雪がいっぱいで、スキーにもってこいの斜面。早速来年のスキー企画の話が盛り上がってしまう。三の窓直下の急斜面を乗り切る事と、今いるこの下のゴルジュの狭い斜面を乗り切る事がポイント。
二俣まで、と言う事で登り始めるが、いよいよガスが濃くなって来て視界はあまりない。デッドラインを12時に決めるが、高度計で1700Mを指す辺りで、誰が言うともなく、「もうここらにしますか。」。結局二俣は濃いガスの彼方、しかし、谷の両岸に迫る、早月尾根と小窓尾根の岩肌と谷の雪、そして新緑の緑が不思議なコントラストを醸し出し、良い感じだった。
谷に下り立った辺りに戻り、ラーメンタイムとする。わずかに平らな場所があり、地面にはなんと板がしいてあったようだ。多分、古いテント場なのかな、すぐ横を水が流れている。
食事中に降り出した雨は、小窓乗越まで登り返した辺りで本降りとなって、雷岩までの下りは土砂ぶりのなか。平井さんは、土砂ぶりの雨のなか、滑べる斜面をプラ靴で駆け降りて行ってしまった。一番遅れた私が雷岩に降り立ち全員集合。そのころには雨もあがりかけていたが、下っている最中は雷もなって、なるほど「雷岩」。
流れは朝よりも水量多く、飛び石もかなり大変そうだ。まず、安田さんが川の真中まで飛び石で渡り、その石の上で山靴からズックに履き替え、最後3M程を渡渉して向こう岸に到達。次にハーネスをつけてザイルを結んだ森岡さんが同じコースを向こう岸へ。右岸側で支点をとり、ザイルを張るが、左岸側には有効な支点が見当たらない。岩に巻いて支点を取り、私が肩ガラミで確保、宮崎さんがカラビナをザイルに通してわたる。川の中程で、宮崎さんが足を取られて転倒、私は必死に確保しようとするが、流れに引き込まれて頭から水に浸かってしまった。なんとか体制を立て直しザイルを引っ張り、宮崎さんも立ち上がって浅瀬に達し、事無きを得た。最後に平井さんが渡り、何とか右岸に無事で全員集合。
頭からズブ濡れになった私は、ザックに着替えを持って来ていたので、凍えずにすんだ。反省点としては、確保は二人で行う事、両岸で確実にビレーする事。また、最初に渡った安田さんはノーザイルだったので、万一滑べって転んでいたら、まず助からなかったと思う。リーダーは、こんな場合こそメンバーの安全確保のため、きちんと指示をしないと行けないのだが、私にはそれが出来なかった。最大の反省点です。それにしても、雪解けの川の流れの力は凄いものです。
何はともあれ、最大の難所を何とか無事突破し、タカノスワリの高巻き道を登山口へ戻る。いつものようにアルプスの湯で山のヨゴレを落す。体力的にはまだまだ余力があったけど、山行の充実感にひたりながら家路に付いた。夏の本番が待ち遠しいです。
富山労山のインデックスへ。
富山労山のホームページへ。