山行報告   祖母谷〜白馬〜唐松〜祖母谷

山域・山名
白馬岳・唐松岳
山行目的
祖母谷から周遊縦走
山行年月日
2001年7月20日〜23日(3泊4日)
メンバー
宮崎、奥野(記)
コースタイム
● 7月20日 祖母谷〜不帰の避難小屋
欅平9:00→9:40祖母谷9:50→16:30避難小屋(泊まり)

● 7月21日 不帰の避難小屋〜清水岳〜白馬主稜線〜杓子〜鑓〜天狗池
避難小屋5:40→8:20清水岳水場→主稜線11:10→白馬鑓ヶ岳13:54→14:52天狗池(幕営)

● 7月22日 天狗池〜天狗の頭〜不帰の険〜唐松岳〜飢鬼沢水場
天狗池6:00→7:30大下り下の最低鞍部7:40→10:08唐松岳11:40→13:41飢鬼沢水場(幕営)

● 7月23日 飢鬼沢水場〜大黒銅山後〜飢鬼山〜南越〜祖母谷
飢鬼沢水場5:15→飢鬼山6:34→避難小屋7:15→飢鬼のタンボ8:00→10:01祖母谷温泉

ずっと以前から、行きたいと思っていたコース。山岳会に入って仲間を得て、ようやく実現しました。不帰〜白馬の道と南越〜飢鬼山〜唐松の道と、それぞれ持ち味は違うけど、魅力溢れる素晴らしいコース。もう一回でも二回でも、来年でも再来年でも、機会があれば何度でも行きたいですね。

7月20日 祖母谷から不帰の避難小屋まで

会駐車場で宮崎さんに落ち合い、宇奈月へ向けて出発する。宇奈月では知人に駐車スペースを融通してもらい、四日間無料で車を停めることが出来てありがたかった。トロッコの駅で始発を待つ。私達の他に数パーティ、山の恰好をしたグループがいる。沢装備で身をかためたパーティは、何処へ入るのか。あるパーティに話かけられ、彼らも同じコースらしい。

7時30分始発で、欅平に着いたら9時前だった。身支度をして、祖母谷への林道を観光客に混じって歩き出す。看板が出ていて、道はすぐわかる。朝9時だと言うのに、真夏の太陽が照りつけて暑い。10時前、祖母谷温泉横の、登山口への林道に到着。早くも大汗をかいた。

一息入れた後、林道を行く。名剣沢出合にプラスチックの看板があり、それに従い荒涼とした名剣沢には入る。右手にフィックドロープが下がっていて、そこが不帰から白馬への道の入口だった。樹林の中を一歩一歩登るが、暑くてなかなかペースが上がらない。百貫の大下りを登ることになるが、思った程の急登ではない。木々の合間からは八ツ峰が遠望できる。やがて道は、尾根をトラバース気味に登り、いくつか小沢を横切る。沢の水は十分冷たく、顔を洗い汗を拭うととても気持が良い。

やがて、小さな沢を横切るとき、晩飯ようにと水を汲む。水を汲んでちょっと行くと、小さな小屋が樹間に見え、手を振って迎えてくれる人がいた。不帰の避難小屋到着。小屋は清潔で、鍋・釜・塩・醤油・水を汲むためのポリタンク、さらにはシュラフまで備えてあった。この道を行く人は決して多くは無いが、それでも小屋は一杯で、外にはテントが二張り程。猿倉を早朝出発して、白馬を越えてここまできた、と言うタフガイ、登り口を間違えて名剣沢を雪渓が現れるまで登ってしまったと言う二人連れ、ずっと抜きつ抜かれつで登って来た某山岳会一行。いずれも個性派ぞろいで、夜は宴会で盛り上がった(盛り上がりすぎ??)。

7月21日 不帰の避難小屋から白馬主稜線、天狗池まで

5時ぐらいに出ようか、と思っていたけど、昨夜の宴会の影響で少し寝ぼうして、出発は5時40分。樹林帯を一登りすると、展望が開けて来る。清水岳への登りだ。尾根筋は草原状になっていて、ハクサンコザクラ、チングルマ、コイワカガミ等が今ちょうど見頃。思ったよりしんどい思いをしたところで、清水岳到着。頂上から少し進んだところが雪田が広がる清水平。雪田からの流水が流れ、雪が消えたそばから花が咲き、行き交う人もほとんどなく、山を満喫する。

清水岳から白馬旭岳への稜線は、登山道にまで広がるコマクサの群落、雪田・雪渓周辺はハクサンコザクラ、チングルマの花盛りと言う夢のような道。やがて、特徴的な山様の旭岳を巻くと白馬山荘が見えて来る。まもなく静かな山道とお別れで、北アルプス有数の登山者を迎える白馬主稜線。祖母谷からここまでは、特に危険な箇所もなく、また迷いやすい場所には赤布、矢印、ロープ等きちんとしていて、登山者数の割には安心して通ることができる道に整備されています。

主稜線で一息入れて、杓子岳を目指す。ガレた展望の良い稜線を快調に行くと杓子岳を越える道と巻く道に別れるが、ここは巻き道を行く。白馬鑓岳へは、白っぽいザクの斜面を下り、鞍部から一頑張り。ミヤマオダマキが美しく咲いて迎えてくれる。鑓岳は山頂に立つ。もう一息で今夜の幕営予定地、天狗池につくはず。

天狗池は、なかば雪に覆われ、静かな雰囲気の良いところ。小屋で幕営の申込をする。何と西瓜を売っていて、一切れ頂きました。水は、天狗池を覆っている雪渓の雪解け水で、冷たくてうまい。テントのなかで何時しか夢ウツツになっていると、雨が降ってきた。明日の天気は大丈夫だろうか?

7月22日天狗池から不帰の険を経て唐松岳、飢鬼沢水場

ゆうべの雨は通り雨だったらしく、快晴の空に見事な雲海が広がる素晴らしい朝を迎えることができた。気持の良い朝日を浴びて、のびやかな稜線を天狗の頭にむけて登る。立山から剱へと連なる山々、振り返ると、昨日越えてきた鑓岳とその向こうに白馬岳。足元には、コマクサ、ミヤマムラサキ、タカネキスミレ、イワツメクサ、ホソバツメクサ、ウルップソウ、ミヤマオダマキ、オヤマノエンドウ、イワオオギ、等など。稜線満歩を満喫して天狗の頭に到着、一息入れて大下りに備える。

さていよいよ今日の核心部大下りから不帰の険越えにかかる。まず大下り。これを登るのはそれは大変だと思いながら下るが、とくに危険な箇所はなさそうだ。ただ、他の登山者の起こす落石には十分注意したい。やがて最低鞍部、ここから望む不帰の険は大きく高い。ゆっくりと登りにかかるが、これも見た程の危険はなさそうだ。要所にはしっかりと鎖・はしごがあって、まず安全に通過できるように整備されている。落石も天狗の大下り程にはおこらないようだ。

唐松岳頂上に到着したのは、10時すぎ。小屋まで降りて、祖母谷への道の情報を得る。とにかく長いので、十分注意して行くように、最後の南越は、岩が苔で滑べるので、足元を注意するように、とのこと。また、祖母谷に着いたら小屋に電話をするようにと言われて、登山者帳に記帳する。記帳後幕営地の水場で大休止、食事をとる。

祖母谷への道は、まず唐松本峰からの尾根をトラバースするように進む。一箇所雪渓を横切るが、溝が掘ってあり難なく通過する。この雪渓に溝が無い時は、ピッケルは必要だろう。いくつか通過する岩場には真新しい鎖が施されていた。登りの場合、最後の力を振り絞っている場所だろう、今はまだ元気な我々は問題無かったが、疲れ切っていたならちょっと注意すべき場所だ。

やがて道はつづら折の樹林のなかの下りとなり、下り飽きた頃平坦地に木道が現れる。水場→ の木の札が枝に下がっているので、それにしたがって進んでみると、飢鬼沢本流に出た。広い河原に飢鬼沢が蛇行している地点で、なかなか良い感じ。これから水の無い避難小屋まで飢鬼山を越えて行く元気もなかったので、ここを今夜の幕営地とする。(勝手幕営、ごめんなさい)

川の流れは穏やかだが、行水と洒落こむにはちょっと水は冷たく、シャツを脱いで、洗ったタオルで身体を拭った。食事も河原でとり、冷たい川の水で作った水割をヤリながら、しばしの山談義。やがて雨が降り出したので、この山行最後のテントに入る。河原から少し上がったところで幕営したせいか、虫がたくさんいて思いっきりかまれてしまった。テントに入る前に虫避けスプレーをしておくべきだったみたい。

7月23日飢鬼沢水場から祖母谷で風呂

山行最後の朝もまずまずの天気で明けた。朝食を取りテントをたたんで四日ぶりのシャバに向かって下山をはじめる。水場の看板から少し行くと、大黒鉱山の精錬所跡地。カナクソがまだ積み上げたままになっていて、その辺りは草も生えていない。飢鬼山の旧道は山腹を巻いているが、今の道は稜線通し。旧道の入り口にはロープが張ってあって、道も半ば草で覆われているからまず間違うことは無い。

いよいよ最後の登り、飢鬼山を目指す。痩せた稜線は両側がスパっと切れていて、また、所どころ崩壊していて、なかなか大変である。今日のように天候がまずまずで視界も良好なら問題無いが、雨でガスがかかっているときは要注意。まして、体力が消耗しているときであれば、特に注意したほうが良さそうだ。尾根は樹林で覆われているから、足を滑べらせても即絶命、と言うわけではないが、この道は人が通らないうえに携帯も全くは入らないから、怪我をすると大変だ。

飢鬼山への登りは、長い稜線でいくつかのだましの頂上を越えて行く。三つ目か四つ目、もう今度こそ、と、ようやく頂上。滅多に登れない山頂は、道からちょっとだけ入った所にある。是非山頂を踏んでおこう。視界は残念ながら今一だったが、良好ならなかなかの絶景になりそうな場所だ。

もう少し山頂でゆっくりしたかったが、凄まじい数の薮蚊の攻撃に早々に退散する。下りも登りに負けず劣らず急な道だ。下り疲れた頃に避難小屋に到着、小屋前で一息入れる。この小屋も清潔で整備がゆきとどいている。ただ、場所が湿っぽいクサムラのなかのうえに水もないので、快適とは言いがたいだろう。

避難小屋を後に道を進めると、ウッソウとした樹林のなかの湿地帯を行く。昼なお暗いブナの林は、初夏の頃は野鳥の楽園になるのだろう、今の時期でもカラ類、キビタキなどがたくさんさえずっていた。やがて、観測装置の置いてある飢鬼の田んぼに出る。あと一フンバリと思い、先を急ぐが、いよいよ足元が湿っていて、岩が滑べり歩きにくくなってきた。

コルのようなところを下ると、水の音が聞こえて来る。どうやら南越沢が近いようだ。道はやがて沢に行き当たり左に折れる。ここまで下ると下界の暑さだ。沢の水で汗を拭い、本当に最後の一フンバリを頑張ることにする。沢沿いの道は斜面をトラバースしていて、歩きにくい。やがて、「最後の登り祖母谷30分」の看板。どうやら、大きく高巻く道らしい。ロープの助けを借りて急登を登り、山腹をトラバースする。行く先に林道が見えてきた。どうやらついたみたい。林道に降り立った時は、しばし放心する程消耗していた。真夏の日差しを浴びながら、林道から祖母谷温泉への橋を渡り、今回の山旅は終りを告げた。

エピローグ 祖母谷温泉にて

祖母谷温泉は、河原に建つ秘境の温泉。まずビールとジュースで今回の山行が無事終ったことを祝して乾杯、ついで露天風呂に入る。ヨシズで囲われた露天風呂は、野趣たっぷりの名湯。四日間のアカを流し、さっぱりとしたところで冷やしソーメンを食べて、おカミさんとしばし談笑。秋も初夏も良いところみたい。もし観光でトロッコに乗ったなら、一足延ばしてこの風呂に入ることをお勧めします。


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