遡行報告 薬師岳西面、岩井谷支流・鳶谷

概念図
流域・渓谷
常願寺川源流真川流域、岩井谷支流・鳶谷
山行期間
2003年8月2日〜3日
メンバー
安田宗人、奥野茂和、坂川範夫、尾田佳孝(L、記)
コースタイム
● 8月2日
アルペン村5:50 → 折立6:45〜7:05 → 岩井谷橋8:05 → 鳶谷出合9:15 → 8Mの滝11:00 → 1800M地点12:20〜12:50 → 二俣13:38 → 30Mの滝14:10〜15:00 → 高巻き15:30〜16:30 → 薬師岳山荘19:15
● 8月3日
薬師岳山荘5:35 → 薬師岳6:05〜6:15 → 太郎平8:10〜8:20 → 折立10:30
その他、参考事項
ガイドブック「とやま山ガイド」、山行記録「大山町山岳会」樣の1999年8月の記録

写真集もあります。

有峰周辺には良い沢が沢山あり、岩井谷支流鳶谷もその一つと聞いていたが、ガイドブック(とやま山ガイド)を見ていて、「コースは長いが割り合い易しい沢」と書いてあったので急に行ってみたくなった。(実際行ってみると大変だった)

アルペン村に4人の仲間が集まり有峰林道へ。開門前の料金所にはすでに30台位の車が列をなしていた。その大半は1800円の通行料を払っていたが、僕たちは無料通行券(有峰フェスティバルのあるこの日は、毎年無料通行券を県内のコンビニ等で配っています。)を持っていたのでタダ。折立に着くと車は満車状態で、かなり手前で駐車、岩井谷へ行く砂防工事用の道路を歩きだす。途中二人組が、岩井谷を遡行し三角点のある1871Mのピークを目指し登山道を下る、と言って足早に追い抜いて行った。

一時間程で岩井谷橋に到着、橋の手前からいよいよ遡行開始。すぐに堰堤が二つ現われるが、問題なく乗り越す。巨岩がゴロゴロして大股で越さなくてはならないので少し疲れる。しばらくで鳶谷出合に到着。沢は本谷の岩井谷よりも、むしろ鳶谷の方が広く感じた。5〜10Mの滝が3つくらい現われたが、何れも直登は無理で左右を高巻く。標高1800M付近で先行の三人が立ちすくんでいる。何があったんだと先を見あげると、巨大な雪渓が谷を埋め尽くし、手前の方は崩壊して通行困難な様相を呈していた。予想以上に今年は雪が多い。

立ちすくんでいた三人は、「もう引き返そうよ」というような顏をしているが、折角ビバーク覚悟で今回の山行を計画したのに、僕はこのままでは引き下がれない。そこでちょっと先の様子を見にいってみると、雪渓は安定しており、傾斜もさほどなく、まだまだ行けそうだと判断し、皆を説得し了解を得て再出発。

2000M付近で二俣に出合うが、左は薬師の山頂直下に突き上げている沢で本流は右である。暫くで大きい滝(上部だけで30M)が現われ、いよいよ核心部に差しかかるが、滝の下部は厚い雪渓(多分10M以上)のため全容が確認できない。雪渓の末端を降り滝の中間部から直登を開始するが、途中で身動きがとれなくなり、ザイルを使用し右岸の急坂を高巻く。ここでかなりの時間を消費する。その後も谷は殆ど雪渓で隠れており、滝の部分だけが顏を出している状態で、標高2250M付近でついに進退窮まり、滝の横(右岸)の岩壁約10Mをザイルを出してよじ登ることになった。その後は、急斜面の薮漕ぎを強いられ、谷とは離れる一方だ。しかし、急斜面を下り雪でズタズタの谷を歩くのも大変、標高も2300を越えているので、このまま薮の急斜面を登って行けば暫くで草原地帯に出ると思い、谷を離れてそのまま進む。30分程で急に視界が開け、薬師の主稜線が見えた。後はこの爽やかな草原を今日の宿泊地薬師岳山荘まで歩くのみだったが、山荘が見えてから本当に遠(辛)かった。

山荘に到着した頃は、既にあたりは暗く19時をまわっていたので、小屋の人に迷惑がられるかと思ったが、第一声が「お疲れ様っ」。温かい出迎えを受け、本当に来て良かったと思い、疲れも吹っ飛んだような気がした。翌日は奥野さんを除き3人で薬師の山頂(展望は絶佳)を踏み、その足で折立まで下る。

山行の途中、僕の我がままを受けいれてもらい有難うございました。でも全員無事下山でき、本当に良かったです。


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